コラム
このコラムは、NFACゼネラルマネージャーの河端隆志が、不定期でお届けします。
2020.02.28
2020.03.18
【第4回 NINJAの走り方って何が良いの?】
NFACの皆さん元気にしていますか。コロナウィルスの影響で、大好きな学校も運動もそしてサッカーもできない日々が続いていますが、如何お過ごしでしょうか。
でも、こうした状況を逆に自分のためにどう使うば良いかと考えることもサッカーの練習に繋がりますね。
今日は「NINJA」の走り方について考えてみましょう。いつも練習で「自分のからだをコントロールできる最大のスピードで走りましょう」と云っていますね。昔の人たちの生活には「速く走る」という必要がありませんでした。したがって、今のような走り方歩き方をしていなかったんですね。そうしたなか、武士は戦いのための鍛錬をし、いわゆる忍者という人々は生活のなかでの必要性から独自の鍛錬をして特殊な身体技能を身に付けました。
日本人の考え方の特徴は「身体動作において、力感(力を出す感覚)や重量感(重たいものを感じる)をできるだけ抑えられるような工夫」をしていました。つまり、できるだけからだ全体を使って主観(本人の感覚)では軽く感じるような動作を追求していきました。「柔よく剛を制す」まさにこのことです。今は西洋の感覚で、力の発揮は筋力で、トレーニングは重量物を持ち上げる重さを感じながらの抵抗感で行っています。これは我々日本人の身体動作感覚と正反対の感覚です。
NFACで教えていることはこの「主観における力感および重量感覚を抑制する身体動作」が根底となっています。これは日本が世界に向けて発信できる素晴らしいオリジナルです。
さて、話が長くなりましたが今回ご紹介するのは、先日撮影を行った「NINJA TRUTH」という番組です。忍者は外国でものすごく人気のあるもので、その神秘性について紹介したものです。私は「走り方」について登場します。練習が再会した時はさらに上達していることを願っていますね。
NINJA TRUTH (NHK World)
NINJA TRUTH #12:
3月18日(水)15:45~16:00
生放送に関しましては
https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/en/live/
再放送
4月29日(水)9:30~9:45、
15:30~15:45、
22:30~22:45
放送終了後は以下のURLからVODで視聴できます。
https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/en/tv/15minutes/20200318/3019108/
【第3回 プレイヤーの主観を中心に置いた身体動作学の可能性】
トップ・レベルを知った上での出口像である15歳までの指導がとても大切
-プレイヤーの主観を中心に置いた身体動作学の可能性-
子供たちの学習能力の凄いことにはいつも驚かされます。NFACではどこまでの言葉が通じるかという実験をいつもしています。トップ・アスリートに教えることをそのまま子供たちに話をしています。理解する者もそうでない者もおりますが、言葉を変えることにより通じるようになる。指導者も日々学ばせてもらっています。
高校生レベル以上の指導者と話をするときに、15歳までに身に付けておいてほしいスキル能力の話が出ます。ヒトの成長を観てみますと、10歳のカベがありそこからお兄ちゃんお姉ちゃんへの成長が始まるように見えます。
NFACでは10歳までにヒトの話を聞けることを重要視します。そのうえで、スポーツとスポーツマンの話をします。「スポーツは遊戯としてのプレーに始まり競技としてのプレーに終わる」カール・ディームの言葉です。プレー(play)は「愉しむ」と訳します。勝ち負けは18歳からでよいでしょう。スポーツとスポーツマンをどのような意味で理解していますか。子供たちに聞いてみてください。答えてくれると思います。
かつて学問は哲学から始まり、ヒトを whole body で捉えた問いかけのために、現代で云うところの理学、数学、物理学、心理学、生理学などのサイエンスが生まれました。日本ではサイエンスを科学と訳していますが、学問領域の細分化が近年進み whole body に還す作業が困難となってきました。
スポーツ科学においても、1964年の東京オリンピックが一つの起点となり、戦後の日本におけるスポーツ科学は多くの研究者や指導者により発展してきたと云っても過言ではありません。その反面、日本人が古来より研鑽してきた「力感・重量感を抑制して作業する」という身体動作の感覚が、欧米に観る「力量・重量抵抗感」からくる動作感覚に変わってしまったのではないでしょうか。
日本のスポーツ科学の原点は猪飼道夫先生(東京大学)から始まったといっても良いでしょう。その弟子たちへのテーマを観てみると生理学が基礎となり「運動生理学」という分野へと移行しましたが、そこには吉村寿人先生(京都大学)らを中心とする「日本人の体力」における環境適応学の仕事が影響しているとも云えます。
私が今日フットボールの現場で科学的根拠を基とするコーチングをすることができていることは、その志を植え付けてくれたのは祖母井秀隆さんにフットボールの何たるかを教わり、猪飼先生の弟子である石井喜八教授(日本体育大学身体動作学研究室)のもとスポーツ科学を学び、吉村先生の弟子である森本武利教授(京都府立医科大学第一生理学教室)から生理学の基礎を学ぶことができたことです。
われわれは長年スポーツ・サイエンスの領域で研究を進めてきましたが、プレイヤーの主観に響く研究はどれほど生産性を上げられたでしょうか。多くの研究は実験室的であり、そこにはある条件がなされ、その条件下での研究と云えます。近年、関係学会や指導者講習会などに参加して思うことは、測定方法や技術は素晴らしい発展を遂げていますが、whole body へと還した議論がなされている研究が少なくなってきているように思えます。
トップ・アスリートの魅力は、普通の人ができないパフォーマンスを表現してくれることです。トップ・アスリートの卓越したパフォーマンスには無駄がなく機能美すら共感できます。このような能力は如何に引き出されるのでしょうか。
トレーニングを積み重ねるアスリートのみならすスポーツを愉しむヒトのからだには、力感・重量感が抑制される熟練した身体動作や運動及び環境ストレスに対する普段は使われない適応能力が潜んでいます。こうした適応能力は末梢からのさまざまな情報を基にした中枢制御機構の働きでその能力が開発されます。
さて、フットボールに目を向けてみましょう。SNSなどの発展により情報を得るための地球の距離が大変短くなりました。そのため日本に居ながらにして様々な情報を得ることができます。
しかし、情報過多の時代で重要なことは情報の選別です。欧米の近年の情報を最新トレーニング情報として取り入れている光景をよく見かけますが、なぜそのようなトレーニングが生まれてきたかというフットボールの変遷を理解せずに形だけのトレーニングをしてしまうので、続けていくとプレイヤーは飽きてしまい、本来のトレーニングから離れてしまうことがよく見受けられます。
フットボールはシンプルなボールゲームですが、シンプルにプレーすることはとても難しいことです。
欧州におけるスポーツの理解度やフットボールの歴史には日本は残念ながら敵いませんが、日本に伝わったフットボールの変遷を顧みてみると、現在の欧州のモダン・フットボールを理解するに十分過ぎるほどの蓄積があります。しかし、その蓄積が上手く伝わっていないのも現状です。
NFACで子供たちにコーチングしているのは、「スポーツ:暴力反対のムーブメント」「スポーツマン:良き仲間」の理解から集団の中での自分自身の在り方からはじまります。そして、歩き方・走り方から基本的な身体動作における「力感・重量感を抑制して作業をする」という身体動作の感覚を体得することです。
この話は、トップ・アスリートが長年の中で体得するものですが、どのように伝えるとよいかという研究から子供たちにコーチングしています。走り方についてはどの競技にも通じるものです。
そのうえで、フットボールにおける個人スキル(テクニックに非ず)である receiving, passing, shooting, expert moving, taking set pieces についてトレーニングしています。状況に応じたプレーの選択として個人スキルがあり、それを効果的なプレーとするためにテクニックがあるのです。15歳までに身に付けなければならないのはパーフェクト・スキルでありそのうえでそれぞれの身体特性に合わせたテクニックを身に付けることです。
したがって、トップを知ったうえでの出口像である15歳までの指導がとても大切であるということになります。
フットボールは11人でするゲームであり、8人制のサッカーなどありません。
【第2回 関西大学のチカラ 健康・スポーツの未来を変えていく】
【第1回 15歳までに身に付けておかなければならないこと】
令和元年11月16日 朝(6時)からとても気持ちの良い一日となりそうな晴天です.
今日は高校選手権の滋賀県決勝戦:草津東高対近江高が行われます.
このブログが掲載される頃には結果が決まっていることでしょう.
さて,私がNFACの滝川会長からクラブを任されてから10年の日々が過ぎようとしています.
当時お引き受けした時に熟慮したことは「クラブ」というものと,クラブ・フィロソフィーの共通理解が得られるかという事でした.
この問題は現在のJリーグでも同様のことと云えます.
そうしたなか,指導コンセプトのひとつとして「15歳の出口像を見据えた育成指導」がありました.
私もこれまで日本サッカー協会の医科学委員を務めており,日本リーグ時代からチームの体力面の測定やサポートをしていたこともあり,NFACの指導コンセプトに合致する指導者として堀井美晴氏をお迎えするご縁を頂きました.
堀井氏はサッカー界ではご存知の方が多いのですが,藤枝東高校からヤンマーディーゼルで選手キャリアを積み重ね日本代表にも選出された方です.
引退後は指導者としてJリーグの監督・コーチ(セレッソ大阪,ガンバ大阪,ジュビロ磐田,川崎フロンターレなど)さらにはスカウトまで歴任した方です.
当時堀井氏と話した中で「子どものうちからトータルに指導を進めていきましょう.スキルを中心にしていきましょう」という大いなる実験をしました.
当時はテクニックとスキルの使い分けが上手くできていないこともあり,また出口像を見据えた指導というものの考え方ができていなかったこともあり,こうしたコンセプトでの指導を開始しました.
実はなぜ冒頭に高校選手権の話をしたかというと,その時に小学校1年生2年生のプレイヤーが高校生となっているからです.
今回は幸いにも草津東(小林,長澤、川畑、古池)には4名,近江高校(辻)には1名のプレイヤーが所属しています.
出場機会を得るかどうかはそれぞれですが,私たちはどこまで個人が成長したか,その後の可能性はどうかということに着目しています.
堀井氏とも最初の指導成果の確認ですね,と話をしています.
そのほかの高校へもNFACのプレイヤーは進学をしており,それぞれのチームでフットボールを愉しんでくれていることと思います.
このようにフットボールに関わらずすべてのスポーツや教育に云えることですが,10歳のカベをターニングポイントに15歳までの一貫指導がとても重要となります.
この育成期間では「勝った・負けた」ではなく,16歳からのキャリアへ如何に繋ぐことができるか,その年代で要求される力を身に付けることができるか,フットボールを理解できるか,ということです.
現在,私は大阪市教育委員会とセレッソ大阪と小学生を対象とした「体力向上プログラム~身体を動かす楽しさ教えます~」プロジェクトをスタートしています.
日本で子供から大人までの長期一貫指導体制のプロフェッショナル組織はサッカーであり,「スポーツ教育」の在り方にこうした長期一貫指導のノウハウを小学生の遊びや体育授業へアシストすることを進めています.
さあ決勝戦に相応しい良い試合となりますことを愉しみにペンを置くとしましょうか
全ての選手が納得のいくプレーができますように!